カバンのこと 
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  古いトランクの話
      
     革のカバンが好きである。
    ブランドの名前が前面にドドーンと出ている派手なものではなく、
   「男はつらいよ」の寅さんが持っているような、
   ノーマンロックウェルさんの絵に出てくるような、
   四角く、がっちりとして、適度に古い方が味わいの出るあのトランクのことである。

      
                     
     
      学生時代、アンティークショップで古いトランクを見つけ、
   間近で見るその重厚さと、四角いのに角が丸い、
   革の持つあたたかい感じがするその姿に、ぐぐぐと心をつかまれて、
   衝動買いをしてしまった。
   もうすぐ親元を離れ、どうにかやってみようと考えていた頃のことである。
    
             

      
     そのトランクは、狭いワンルームに、開いて壁にもたれかけ、
    鏡を立てかけて、ドライヤー、化粧品をならべて、
    ドレッサー代わりに使っていた。
    我ながら、おしゃれでない?!とひとり悦に入り、
    ひとり暮らしを終えるまで、お気に入りコーナーとして使っていた。
    
    
     ネットで、『ウエディングトランク』という習慣の記述を読んだ。
    ヨーロッパのウエディングでは、新婚家財をトランクに詰めて、
    新居に嫁ぐという古い習慣があったそうで、とても素敵なことだと思った。
    結婚後の人生と同じく年月を重ね、風合いを増し、
    思い出を詰めておくもの・・・。
    
    
     古いトランクは今、当時のanan、ELLE、オリーブなどの雑誌が入って、
    部屋の片隅にしまってある。
     子供たちの物に占領された部屋に、飾るスペースはないけれど、
    あと15年もしたら、娘が面白がって見てくれるかもしれない。
    どんな風になっているか、今は想像もつかないけれど、
    その頃には娘も“年頃”を迎えている。
    
    
    
                
                    
                  
                 
                 
 「ウエディングトランク」についての記述はこちら 

     
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